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interview|ゆらぎをつくること

津田清和さん

今夏 evam eva yamanshi 形では、奈良県在住のガラス作家 津田清和さんの個展を開催します。

自身の作品とその先にある人との関係。それを使い手として、また作品と使い手を俯瞰的に見つめる。その行き渡りがとても軽やかな津田さん。つくりだすガラスは、美しく面取りしたもの、気泡の入った柔らかいニュアンスのもの、箔を重ねたマットなものまでテクスチャーはさまざま。そのどれもが日常の暮らしに溶け込む柔らかさが在りながら、空間に佇む姿は確かな存在感を放ちます。繊細な手仕事と探求された技法によって、素材のもつ個性的な表情が浮かび上がってきているようです。
奈良県は葛城市にある工房に伺い、ガラスとの出会いから作家に至るまで、自身の制作についてお話を伺いました。

ガラスとの出会い

ふとしたきっかけで魅せられ、次第にのめり込んでいったというガラスの世界。当時法学部の学生だった津田さんは、友人と北海道旅行へ行った際に訪れた小樽の吹きガラス工房でガラスと出会います。

「職人さんがガラスをつくっている現場をはじめて目の当たりにして、燃えるような赤い火の玉を転がしている様子がどこか神がかったもののように見えたんです。そこであの火の玉を自分も触りたいという衝動に駆られて、旅行から帰って書店で地元の奈良にも吹きガラス工房があるのを見つけ、その日の内にその工房へ見学に行きました。そこの工房では週に何回か教室もやっていて、自分も週に一回教室に通うようになりました。卒業後の進路としてガラスをやっていきたいという気持ちもあったのですが、何を足がかりにすれば良いのかもわからず、ひとまずは会社に勤めながら教室に通い続けるということをしていました。」

二年間の会社勤めを経た津田さんは、福井県のEZRA GLASS STUDIOで一年間吹きガラスの基礎を学びます。卒業後、長野県諏訪市にあるSUWAガラスの里でスタッフとして働いた後に、金沢卯辰山工芸工房ガラス工房へ入所。そこで研修生として三年間を過ごします。

「ガラスを始めたばかりの頃は、何か目的をもってガラスに向かうのではなく、ただ衝動のままにつくっていました。ガラスを本格的に学び出してから数年経って入った金沢卯辰山工芸工房は、いわば大学院のような研修施設だったので、先生が一から十まで教えてくれるということはなく、自分で自由にテーマを決めて数年間の時を過ごします。自由であるからこそ、何を目的にガラスをやっているのかということが問われます。そこがはじめて自分と向き合う機会になりました。入所してからの一年半は、どうして自分はガラスをやっているのだろうかと、模索していました。」

美しい輪郭を保ちながら普段の生活に自然と溶け込む津田さんの作品からは、目的をもってガラスに向かうこと、ガラスというメディアの向こう側にいる人のことを想像するというものづくりへの姿勢が伺えます。そういった姿勢を持つようになったことには、金沢卯辰山工芸工房でのある出会いが大きかったといいます。

「ものづくりをする際に、その先にどういう人がいるのかということを想いながらつくるかどうかで、ものとしての在り方だけでなく、人への届き方、伝わり方も全く違ってくると思います。研修施設に入った頃は、器や造形物などいろいろつくっていたのですが、たまたまそこで器だけを制作している人に出会ったんです。なんで器ばかりつくっているのと聞いてみたら、彼女が「自分にとって器は造形物よりもリアリティがあるから。全てを言葉で説明できる。そして相手に伝えることができる。そうでないものに対しては説明できないから私はしない」と言ってくれたんです。そのことがきっかけで自分も吹きガラスで器をつくってみようと心に決めることができました。」

ゆらぎのあるもの

気泡を含ませた花入やランダムに面取りされたコップ、ガラスと金属箔を重ね合わせた平面作品。津田さんの作品は様々な技法を柔軟に取り入れ、形づくられています。そうした着想のもとは、どういったところにあるのでしょうか。

「古いものが好きなので、そこから影響を受けることは多いです。心惹かれる古物のもつ魅力や美しさがどこにあるのか、職人の技から生まれた色彩や質感をそのものから読み取り深めていく。その視点は人それぞれに違うし、それこそが多様性だと思います。長い器の創作の歴史のなかで、器の形はすでに完成されている面もあります。その中で自分はどのような趣向を凝らすか、ということが作家性に繋がっているんだと思います。」

「例えば、古い家屋にあるガラスがゆらいだような表情をもっていることがありますよね。あれは円筒法という昔の技法でつくられているからです。吹いて長い筒状にしたガラスを切り開き、再度窯で熱することで平面にするやり方です。ガラスを吹いて伸ばすという工程があったため、古い窓などはガラスの流動性が残ったゆらぎのある表情になります。」

手仕事でつくられるガラスには、その流動性の名残ともいえるゆらいだ表情が出てくることがあります。そういったゆらぎをも活かしながら制作を行う津田さんは、ガラスだけでなく金属などの他の素材からも手仕事の名残を感じられる部分があるといいます。

「ガラスに金属箔を重ね合わせて加熱して制作する平面作品があります。それを初めて試作した時、接着面に放射状の線が出てきて、はじめは何だろうと思っていたのですが、金属を薄くする際に職人さんが金属を叩いて広げた名残だとわかりました。箔の状態では見えてこなかった金属という素材のもつ記憶や息遣いが、全てガラスに写しとられているような表情が出てきました。」 「自分という人間も、季節や時間帯によって体調や気分の良し悪しがあるので、それがつくるものに反映されている部分があります。些細な部分かもしれないけれど、それが手仕事の良いところで、何かゆらいでいる部分があって、どこまでそのゆらぎを良しとするかということだと思います。」

ものとの関係性

半年間かけて溶接機を使って自分で設備をつくられたという津田さんの工房。動きやすいように空間を広く取り、手仕事の道具が整然と並んでいます。ガラスづくりの一部を実際に体験させていただくと、ガラスづくりは手先の繊細な作業だけでなく、全身を使った運動であることがわかります。

「立ったり座ったりと、ガラス制作は身体性が問われる作業です。上手い人であればあるほど手数が少なく、無駄のない動きでやっています。どちらかといえばスポーツに近い感覚で、ガラスを始めた時には、ものができた嬉しさよりも、なんでこんなにうまくできないんだろうという思いの方が強くありました。その分やればやるほど上達していくので、だからこそ趣味で終わらずに続けて来られたのかなとも思います。」

「例えるなら、ガラスとペアで踊るダンスのような感覚です。こちらがリードしていかないと、ガラスが上手く踊ってくれない。無駄な動きがなく、綺麗に踊れたら仕上がりも美しいものになります。このステップだからこれが綺麗になる、この無駄なステップがあるから良いものができないといったように、こちらが日頃練習を積んでおかないといけません。」

薄すぎず厚すぎず、日々の暮らしで普段使いができるような距離感。津田さんの作品には日常に自然と溶け込むような程よい緊張感が与えられています。それは、津田さん自身が作品、そしてその奥にいる使い手と築く関係性を大事にしているからだといいます。

「以前に、自分自身が使ったり、洗ったり、作品と時間を共有する中で心地良いと感じる部分がないと、その作品と自分との関係性が成り立たないのだと気づいたことがあります。例えば、薄づくりのコップもあまりに薄すぎると洗うときに割ってしまわないかと神経を使ってしまう。制作にあたる時は、誰のために、何のためにつくっているのかということをまず考え、自分自身がその作品と良い関係を築けるかということを意識しています。」

「ものづくりをしていると誰しも迷うことがあると思います。届けたい想いとその反応を行ったり来たりしながら、ものの奥にいる人を想像することができないと、自分のつくっているものに迷いが生まれてしまいます。自分も経験したからいえることなのですが、売れないからつくっているものが良くないのではないかと思ってしまいがちです。それはまだ届ける人との接点が見つかっていないだけで、つくることと、売ること、届けることそれぞれの立ち振る舞いは違うんだと分けて考えることが大事かなと思います。」

旅行で立ち寄った工房での印象的な出会いから、次第にガラスの世界にのめり込んでいった津田さん。ガラスという素材への向き合い方やその奥にいる使い手へ馳せる想いを真摯に語る様子からは、楽しみながらも真剣に自身のものづくりへと向かう姿勢が伺えました。

柔らかい自然光の工房で赤く燃える炉から引き出されたガラスの液体が津田さんの手に導かれ、ダンスのような一定のテンポで流動と静止を繰り返して形を成してゆく。一つひとつの色合いや厚み、形の異なる吹きガラスゆえの不均一な美しさ。手にとり、使えばわかる心地よい感触。

青葉が美しい初夏の自然とともに、evam eva yamanashi の白い空間に溢れる光を受けとめ、透かしゆく透明な景色をご高覧ください。

evam eva yamanashi|形
津田清和 個展
2022.7.16(土)– 8.1(月)
OPEN:11:00 – 19:00 *最終日17:00 close

詳細は、下記のウェブサイトをご覧ください。
https://evameva-yamanashi.jp

ベーシックなデザインのコットンシャツ。糸の撚りを多くかけたコットン糸で織り上げた生地は、ざらっとした質感で肌離れよく、涼やかな着心地です。
津田さん|E221T145 cotton shirts ¥28,600

着込むことで柔らかさと自然な艶が生まれる水撚りリネンのチュニック。
尚子さん|E221T034 water linen tunic

[ ガラス作家 ]津田清和
1997年関西大学法学部法律学科卒業後、2001年諏訪ガラスの里に勤務、2002年金沢卯辰山工芸工房ガラス工房に入所後、2005年に財団法人富山市ガラス工芸センターに勤務。2008年奈良県葛城市に工房を開設。

photographer:小室野乃華


Interview “Creating fluctuation”

Tsuda Kiyokazu

This summer, evam eva yamanshi Katachi will hold a solo exhibition of Kiyokazu Tsuda, a glass artist living in Nara Prefecture.
The relationship between his work and the people beyond it. He looks at it as a user. Mr. Tsuda is very light in his way of doing so.The textures of the glass produced vary from beautifully beveled, to softly nuanced with bubbles, to matte with a layer of foil. Each piece has a softness that blends in with everyday life, yet has a definite presence when placed in a space. We visited his studio in Katsuragi City, Nara Prefecture, and talked with him about his own production, from his first encounter with glass to becoming an artist.

Encounter with Glass

The world of glass was a fascinating one to him, and he gradually fell in love with it. Mr. Tsuda, who was a law student at the time, first encountered glass at a glass-blowing studio in Otaru, which he visited on a trip to Hokkaido with friends. After working for a company for two years, Mr. Tsuda studied the basics of glass blowing for one year at EZRA GLASS STUDIO in Fukui Prefecture. After graduation, he worked as a staff member at SUWA Glass no Sato in Suwa City, Nagano Prefecture, before joining the Kanazawa Utatsuyama Craft Workshop Glass Studio. He spent three years there as a trainee.

Things with fluctuation

Bubbled flower vases, randomly beveled cups, and flat pieces of glass and metal foil layered on top of each other. Tsuda’s works are formed by flexibly incorporating various techniques. What is the source of his inspiration?

“I love old things, so I am often influenced by them. I try to understand the charm and beauty of old things that fascinate me, and I deepen my understanding through the colors and textures created by craftsmanship. Each person has a different point of view, and I believe that is what diversity is all about. In the long history of vessel creation, the form of vessels has already been perfected in some aspects. What kind of style I will put into it is what makes me an artist.”

Glass made by hand sometimes has a fluctuating appearance, which can be said to be a remnant of its fluidity. Tsuda, who creates his works while taking advantage of such fluctuations, says that he can also feel the remnants of handiwork not only in glass, but also in other materials such as metal.

“There is a two-dimensional work that is created by overlapping metallic foil on glass and heating it. When I first made a prototype of this work, radial lines appeared on the surface, and at first I wondered what they were, but I found out that they were the remnants of metal that had been beaten and spread by the craftsman when thinning the metal. It was as if all the memories and breath of the metal material, which were not visible in the foil state, had been captured in the glass.”

“I, as a human being, also have good and bad physical conditions and moods depending on the season and time of day, and these are reflected in the things I make. It may be a small part, but that is the good thing about handwork, there is something fluctuating, and I think it is a question of how much of that fluctuation is acceptable.”

Relationships with things

It is neither too thin nor too thick, and has a sense of distance that allows for everyday use in one’s daily life. Mr. Tsuda’s works have a good sense of tension that allows them to blend naturally into everyday life. This is because Mr. Tsuda himself values the relationship he builds with his works and the users behind them.

He said, “I realized that unless I myself feel comfortable in using, washing, and sharing time with my work of art, the relationship between the work and myself cannot be established. For example, if a thinly made cup is too thin, I am nervous about breaking it when washing it. When I am working on a piece, I first think about who and what I am making it for, and then I am conscious of whether I can build a good relationship with the work myself.”

“I think everyone gets lost in the process of making things. If you cannot imagine the people behind the product while going back and forth between the thought you want to deliver and the reaction, you will get lost in what you are making. I think it is important to consider the different positions of creating, selling, and delivering separately.”

The sincere way he talked about his approach to the glass material and the thoughts for the users behind the glass, showed his serious attitude toward his craftsmanship while having fun at the same time.

In the soft natural light of the studio, glass liquid drawn from the red-hot furnace is guided by Tsuda’s hands, flowing and standing still at a constant tempo like a dance, begin to take shape. The uneven beauty of blown glass, which differs in hue, thickness, and shape from piece to piece. The pleasant feeling of the glass in one’s hand is something that can be felt only by using it.

Please enjoy the transparent scenery of the white space of evam eva yamanashi as it catches the overflowing light and passes through with the nature of early summer when the leaves are beautifully green.

[ Glass Artist ]Kiyokazu Tsuda
Graduated from the Faculty of Law, Kansai University in 1997 and worked at Suwa Glass no Sato in 2001. Joined Kanazawa Utatsuyama Craft Workshop Glass Studio in 2002, then joined Toyama City Glass Art Center Foundation in 2005. 2008 Opened a workshop in Katsuragi City, Nara Prefecture.

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