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interview|自然と暮らすこと

アーティスト UA
「evam eva」 デザイナー 近藤尚子

UAさんにはじめてお会いしたのは2014年。山梨県北杜市にあるギャラリートラックスで開催していた evam eva のイベントにご家族にでいらしてくださり、そこで私たちの衣服とめぐり逢うきっかけがありました 。訪れるたびに穏やかな気持ちになる場所での出会い。何かを選ぶ価値観の交差は、また別な形でも交差していきます。

アーティストとして活動する一方、カナダの島で自然と暮らしながら子育てをするUAさん。同い年であり、同じく母としての一面もある evam eva デザイナーの近藤尚子が聞き手となり、カナダでの暮らしや子育て、音楽性の変化についてお話を伺いました。

移住のきっかけ

尚子さん:東京という都会から距離を置いて、神奈川、沖縄へと移っていかれ、現在はカナダの島で自然に溢れた暮らしをされていると伺ったのですが、その土地に至ったきっかけは何だったんでしょうか。

UAさん:夫が永住権を持っていたというのが大きいのですが、正直なところカナダという国や文化には最初あまりピンときていなくて… きっかけということで言うと、沖縄にいる頃に友人が執筆している雑誌の記事で、サスティナビリティが実現している島としてその島が紹介されていたのをたまたま見つけたんです。それから何となく気にはなっていて、モントリオールに住む夫の祖父を訪れるついでにキャンプをしながらカナダを横断旅行した時、最初に滞在したのがその島だったんです。全くの偶然だったのですが、「この気持ちよさは何なんだろう」という理屈では言い表せない感覚は初めからありました。

尚子さん:やはり実際に訪れてみて感じる部分が多かったのでしょうか。

UAさん:そうですね。目に入ってくるものすべてが美しくて、長男をシュタイナー教育の学校に入れていたのですが、島自体がその理念の生きている場所のように感じられました。島で出会った人たちともコミュニケーションが取りやすく、自分が子育てについて持っている理念にもあまり説明がいらなかったんです。日本人の移住者もそれなりにいて、具体的に島の様子を聞けたのも大きかったです。

尚子さん:海外の土地で暮らす上では日本人が周りにいると心強いですね。子育ての環境は、子どもたち自身で環境を選べないからこそ、親の価値観が色濃く反映されると思うのですが、その環境づくりで心がけていらっしゃることはありますか。

UAさん:島に移住してからしばらくして農場を買ったのですが、そこは自分たちで水道や電気を通したり、一から家を建てたりと、本当にいじりがいのある場所なんです。すでに用意されているという環境ではなくて、どうやって人の暮らしが成り立っているかということは、一通り子どもに見せることができているかなと思います。人が自然を壊すリアリティというか、やはり人はある意味で不自然なことをして暮らしているんだな、とわかることで見えてくる限度ってあるじゃないですか。都会にいると、どんどん高くなる高層ビルのように行き過ぎてしまって、なかなかその限度が見えてこないように思います。

尚子さん:確かにどこまで行くんだろうという感覚はありますよね。自分たちはある程度見極めることができるけれど、子どもにはその見極めが難しいところがあって、そういった価値観をどう伝えるかも大事ですよね。都会には情報が溢れていて、見て欲しくないことや知って欲しくないことに子どもが晒されてしまう面もあると思います。

UAさん:子どもって何もない方が発想が豊かになりますよね。沖縄にいた時に移住組の子たちと一緒に子どもを馬牧場に連れて行っていたんです。だだっ広い草原があるだけなのに、子ども達は土で焼き物を作ってみたり、火を起こして何かを焼いてみたりと自分で遊びを考え出すんですよね。やはり「ない」ことを選べる方が豊かだなと感じます。ほっとくと情報の渦の中ですぐに大人になってしまう時代だと思うので、できる限り子ども時代を守ってあげたいなと思います。子育ての環境づくりでは、そういったことを心がけていますね。

島での暮らしぶり

尚子さん:サスティナブルが実現していると紹介されていた島での暮らしぶりは、実際どういったものなのでしょうか。

UAさん:コミュニティの中で回していくという文化があって、ガレッジセールも当たり前にありますね。基本的に物価は高い国なのですが、一度人の手に渡ると安く買うことができるので子どもの洋服などはできる限りリサイクルで揃えるようにしています。島のネットワークサイトもあって、そこで売り買いしたいものだったり、仕事や教育に関する情報だったりを互いにやり取りができるようになっていて、インターネットも上手く使いながら島のコミュニティで回していくということができているなと思います。

尚子さん:物だけでなく、力や情報を交換してお互いに助け合う仕組みができているんですね。

UAさん:子ども達の担当で育てた野菜を無人の小屋で売ったりもしていて、そういったささやかな喜びを通じて、自分たちが育てたものを食べてくれている人がいるという循環を子どもに体感してもらったりもしています。あとは野生動物や家畜が身近にいる環境なので、生まれては死んでという生死の体験が見れるのも子どもにはいいなと思います。死を見ることが価値観の軸になっていくだろうし、死や汚物を排除しているように見える都会では体験しづらいことかなと思うので。

尚子さん:私の住む田舎だと昔は家でお葬式をしたり、歩いてお墓まで行ったりと弔いの行事をよく目にします。時の流れとともに、特に都会で暮らしていると本来あるはずのものが見えなくなってしまう面もあるのかもしれませんね。

精神と表現

尚子さん:歌手として活動を続けられていく中で、暮らす環境の変化が作品に影響する部分もあると思うのですが、その辺りはいかがでしょうか。

UAさん:3.11以降に自分が何を歌うべきか考えあぐねていて、沖縄を離れると同時にやっと言葉が形になって「JaPo」という作品ができたんです。カナダで作ったのですが、そのテーマは全て沖縄で感じたことでもあって、そこで何かを終えられた感覚がありました。徹底的に愛について歌いたいと思ったけれど、聞いてみるとエゴにしか聞こえないという現実や、いわゆる「ポップ」とは程遠いものになってしまう自分の作品づくりの癖がわかったというのもあって、今はど真ん中に届けられるような「ポップ」をテーマにして作品を作っていますね。

尚子さん:UAさんの音楽には精神性があるというか、感情や思いが声と言葉に表れているなと感じます。

UAさん:最近つくづく、精神と表現は一致させるべきものだなと思います。精神という言葉を聞くと、どこか目に見えないものというか、自分たちが生きている日常や、言葉とか態度とは別の所に存在している印象があるけれど、そういった考えは「逃げ」のようにも思います。歌っている時や今こうして話している言葉でさえも、精神を表現しているんだという覚悟を持たなきゃなと。

尚子さん:洋服は明確な言葉を売っているわけではないので、そこで直接的に精神を表現することは難しいなと思うのですが、作り手として精神性は大切にしたいなとは思っています。その上で、お客さんとどう感じあえるかというのも大切だなと思います。

UAさん:evam evaさんは山梨にベースがあって、そこから発信されているのはいいですよね。そこに精神性があるようにも思います。心の豊かさって、自分の心が幸せだなって思うことが指標になっていて、比べる必要もないし、量ではなく質だなと思うんです。まさにevam evaさんの服は、たくさん持っていたいというよりは、お気に入りの上質なものを毎年一つ買ったり、くたびれてきた定番のものをもう一度買ってみたり、というブランドだなと思います。

尚子さん:ありがとうございます。使って通り過ぎていくというのではなく、経験も含めて「重ねる」ということができたらいいなと思っています。都市部にいれば色々なものがたやすく手に入るんだろうなと思うのですが、変化が速い時代の中で消費されずにいられるのは、別の場所に拠点があるからかなとも思います。ある意味で闘いの場として東京に仕事をしにきて、さあ帰ろうと家に帰れることで、リセットもできるしバランスも取りやすいのかなと。

UAさん:距離は違えど、それは全く同じ思いです。目から鱗が落ちるような体験を共有できる子どもがいる場所が私のホームだと感じます。常に一緒にいるというのは難しいけれど、子どもと接する時間も量ではなく質だなと思います。自分が何かを我慢して子どもと接しても、どこかネガティブになってしまうだろうし、常にポジティブな気持ちで子どもと接することができるようにありたいなと思います。

UAさん | E213K116 poncho ¥39,600 E213K078 pullover ¥22,000 V213T935 pants ¥23,100 E213K004 leggings ¥13,200  E213Z065 stole ¥26,400
編んだニット地を圧縮したプレスウールで仕立てたポンチョは、柔らかく軽やかな着心地。色のコントラストをつけたトップスとパンツがスタイリングを引き締めます。差し色に巻いたウールストールもふわっと軽やかです。

尚子さん|E213142 robe ¥35,200 E213G143 snood ¥ 13,200 V213K941 camisole ¥17,600 11月上旬納品
毛足が感じられるなめらかなウールセーブルのローブにスヌードを重ね合わせたレイヤードスタイル。

[ アーティスト ]UA
1995年デビュー。1996年発表のシングル『情熱』が大ヒット。以降、浅井健一(元ブランキー・ジェット・シティ)らと組んだ「AJICO」、ジャズサックスプレーヤー菊地成孔とのコラボ、映画主演など、活動は多岐にわたる。ライブ、フェス、楽曲制作と精力的に活動。朝日新聞デジタル&wでコラム連載、α-stationで番組を持っている。
website|http://uaua.jp
instagram|ua_japonesiansinger_official

photographer:小室野乃華

© kondo knit co.,ltd.